赤  「先輩、知ってますた?オラだぢってさ、名前変わるごどあるんだすって。」

黒  「そうなの?」

赤  「はあ、おどろいだっす。」

半黒 「あだし、それ聞いだごどあるわ。」

黄  「…。」

赤  「海にいるどきど、陸(おか)さ上がったどきどでは名前が違(つが)うんだそうです。」

半黒 「なんだっけな、一回聞いだんだげども、忘れだなあ・・・。」

黒  「なんだや。忘れだのが?

    んだげども、なんが、嫌(や)んだ話だな。

    一回付いだ名前が変わるんだべし?」

半黒 「んだよお。なんだが自分じゃなぐなるみだいで、嫌(や)んだよねえ。」

赤  「どんな名前に変わんだべが。」

黒  「英語みでーなんだらいいげど、中国語みでーだら、カツカツすてて呼ぶのに面倒臭そうだーなー。」

半黒 「あだし、じぇしーどがっていいなあ」

黒  「じぇ~すぃ~!?あーはははは。

    ジェシー?

    おめえがジェシーだら、おらあ、ジャクソンどがになってすまうんでねーが?」

赤  「先輩だぢ、どっつも柄でないですねえ。ははははは。」

黒、半黒「んだべが?」

黒  「ほんなら、おめーは何よ。」

赤  「俺っすか?俺はジョンソンどががいいがな。」

黒  「な~んだや、結局おめーもでねが。」

半黒 「な~んだや。ははははは。」

黄  「…。」

黒  「おう、転校生、おめーはよ。」

黄  「…。」

黒  「ああ、おめーはジョニーどがって言い出すんじゃね~べな!ははははは。」

半黒 「ジャイアンどがさっ!」

赤  「いやあ、それ面白えっすねえ。」

黄  「みなさん…。」

赤、黒、半黒「?」

黄  「全部頭が『J』じゃないですか。」

黒  「あ…あれ?そが?」

黄  「他には思いつかないんです?」

赤  「いや…ほんなら、『B』どがで…。」

黄  「そういう意味じゃないですよっ!バリエーションを言ってるんですよ!」

半黒 「ば…バリエーションって、なんがそんなごど考えで話てねぇよなあ。

     あだしだぢそんなにあだま良ぐないがら…。」

黄  「頭の問題じゃないですよ。世界観のことを言ってるんです。」

赤  「世界観って…。そ~んなに大げさな話でなぐね~すが?」

半黒 「んだよねえ。ただの井戸端会議だものなあ。

     そんなにムギにならねくても…。」

黄  「なりますよ!

    見てください!この向こうは太平洋なんですよ?

    その先には大陸があるんですよ?」

赤、黒、半黒「…はあ。」

黄  「そこには『J』のつく名前の人ばっか住んでるわけじゃないんだ!

    アンソニーもいれば、キャンディもいるんですよ。」

赤  「そら、そうだげど…。」

黄  「なのに出てくるのは頭『J』の名前ばっかりでバリエーション少ないにも程があります!大体にして…。」

黒  「おい。」

黄  「はい。」

黒  「おめー、都会がら来たのがそんなに自慢だが?」

黄  「いや、そんな訳じゃ…。

    気を悪くしたのなら謝ります。すいません。けれど…。」

黒  「ふざげでんでね~ぞ、こら、気取りやがって。

    知識人がいるのは都会ばっかでぁねんだーぞ?

    大体にしてが標準語が気にいらねぇんだ、標準語が。」

赤  「ちょ…先輩…」

半黒 「いあや、あだしもそう思う。なんが勘に障る。」

黄  「気取ってなんかいませんよ。真実を話してるんです。

    今ここで起きてることを話しているんです。」

黒  「なんだ?面白れえが。面白れえんでねーが?何が起きてんだよ。教えてけろ。」

黄  「思考、想像の停滞、後退です。」

赤、黒、半黒「は?」

黒  「しこ…?て…てい…?」

半黒 「まだ、わがんね~ごど言い出したが?」

赤  「いっつも難しいんだよなあ、おめ~の言うごだぁ。」

黄  「難しいことじゃないんです。

    僕は先へ、未来へ進みたいんです。

    なのに、みなさんは同じところをぐるぐると回ってる気がする。」

黒  「仕方ないんでね~が。おらだづはこういう風に生まれできたんだがや。」

赤  「んだよ。」

半黒「んだよねえ。」

黄  「そうです。そうなんです。こういう存在の仕方しか許されていなんです。」

黒  「存在…て…。」

黄  「勿論、宇宙規模で考えればこの問題の打破は不可能です。

    けれど、これらはすべてマテリアリズムの中枢概念に依存し過ぎた、それは至極単純な概論でしかないんです。

    観念論的にはそうではない。

    我々は別の形態をもって、そう、思考の中では別の存在の仕方が可能なんだ。」

黒  「…。」

赤  「…。」

半黒 「…。」

黄  「ナノグラムの重量を持つ物質でさえもそれより小さな重量、質量を持つ元素から構成されているんです。

    それぞれの元素に名前をつけたのは誰ですか?誰だと思います?」

黒  「…し…しらねぇよぉ、そんなのぉ…。なあ。」

赤  「知らねえす。…ニュー…トン?」

半黒 「あんだ、なんぼなんでも、そりゃあ違うよぉ。ダ…ダーウィン?」

黄  「どっちも違う!いろんな発見者の名前やなんやかやです。」

黒  「おいおい、出たよ。なんやかや、ってなんだよ。」

赤  「そうだよ。しらね~んじゃね~の?本当は?」

黄  「いや、そんなことは…。」

半黒 「あ~、ごまかしてんだな?

     んだ、ぜってぇ、んだよ。知らねえなら話にだすなよ、あんだ。」

黒  「な、な…なんだよぉ。

    一瞬、人を尊敬のまなざしにさせやがってえ。なあ。」

赤  「そうすよ。おら、一瞬、先輩よりすんげぇのがと思ったもの。」

黄  「いや、だから…。」

黒  「な~にを言ってんだが。おらはなんにもすごくね~べよ(照)」

半黒 「まだ、まだ。謙遜、謙遜。」

黒  「そんなごどぁね~んだってば(照)」

黄  「言いたいことはそんなことじゃない!」

黒  「な…なんだよ。」

黄  「元素に限らず色んなものは正式名称が決まるまでは仮称で呼ばれるんです。

    番号とか、ある規定のルールに従ったね。」

黒  「ほんなら、俺は1番だ。」

赤  「あ、俺2番取っぴ!」

黄  「あの…ちょっと…」

半黒 「あら、あんだ先輩のあだしより先を取るの?」

赤  「あ、すんません。じゃ、3番で。」

半黒 「いやいや、ほしたら、1番は長老でね~の?

    一番最初っからここさブラ下がってるんだから。」

黒  「お、そういやそうだ。じゃ、次は姉さんが2番か。」

黄  「みなさん、そうではなくって…」

赤  「でば、俺4番だ。」

黒  「ほんだら、おめ~は5番だな。」

半黒 「そうだよねえ、最後にブラ下がったもんね。」

黄  「あ、僕は何番でも…。

    て、そうじゃなくって!

    話はそうではなくって、だから、我々にとっても名前は単に概念的に認識しやすくしているだけであって、

    それが変わるからといって…」

黒  「いや、ちょとまて?番号は面白ぐなぐね~が?アルファベットどがさ。」

半黒 「ほんだね。そひたら、あだし英語の名前がいいなあ。」

赤  「俺もそうだな。」

黒  「ほんじゃ、姉さんはジェシーだな。」

半黒 「じぇ~し~?じぇし~かあ。恥(はづ)がすいな、なんだが。」

黄  「ちょっとみなさん…。」

赤  「先輩はジャクソンで、なじょですか?」

黒  「いいねえ。いいねえ。」

黄  「話が回ってます!回ってますって!

    しかも立場微妙に変わりながら、ぐるぐるぐるぐる!」

黒  「うるせ~!おめえのなんだが小難しい話ば目がまわんだよ。ぐるぐるぐるぐる!」

黄  「こんな程度で目を回さないでください!ぐるぐるぐるぐる!大事なことです!」

黒  「俺はどうでもいいの!回るもんはまわんだよ!ぐるぐるぐるぐる!」

黄  「そんなだから、いつもこんなとこにぶら下がってるんですよ!ぶらぶらぶらぶら!」

黒  「そんなごど言って、降りれんのが、おめ~は?

    ああ?

    降りれね~べ?降りれるわげね~べ?ぶらぶらぶらぶら!」

黄  「降りることが目的じゃないんです!」

黒  「なにが目的だ!何が狙いだ!このやろ~。おらおらおらおら!」

赤  「陰謀が?策略が?計画的犯行が?

    あ~、あの娘をさらったのは、さてはおめ~が!?おらおらおらおら!」

黄  「あの娘…?」

半黒 「なんて奴!ろくでなし!鬼!

     いくら欲しいの?なんぼだけ金がいるのさ?

     おらおらおらおら!」

黄  「いらないですよ!誰ですかあの娘って!」

黒  「いらない?じゃ、何が欲しんだ。なんにもくれるものはねぇんだぞ?」

半黒 「娘も無けりゃ、息子もね~し。こんなだがらさ、おらだづ!」

赤  「わがった!わがったぞ!こっから降りようとしてんだ!」

黒  「な~に~?なんだと~?降りるだ~?

    これがおれだぢの仕事だぞ!

    ここにいんのが、おれだぢの仕事だぞ!」

赤  「んだよ、んだよ。なに言い出すんだがよお、転校生!」

黄  「だから、さっきからそう…。」

半黒 「長老!長老!不届ぎものだが。不届ぎものがこごにいるだが!」

黒  「長老!これぁ締めてやりましょう。こんなの許されるもんでね~がす。」

赤  「なんだ~その顔。長老さむがってぇ。転校生、おお?」

黒  「長老!」

半黒 「長老!」

赤  「長老!」

黄  「長老、違います!違い…」

金  「やがまし!」

全員 「しーん…」

金  「海では『烏賊』。

    陸では『するめ』。

    飲み屋で焼いて出されっど『あたり女』。」

全員 「…」

金  「それ以上も、それ以下もねっ!いが?」

全員 「…」

金  「…。」

全員 「おおおおお…。

    さすが、長老…。だてに最初に作られてね~な。な。な?」

黒  「何が以上で、何が以下だかわがんねげど説得力はすげ!」

赤  「…ん?それって…喰われるってことが?焼いて食われるっつごどが?」

半黒 「ええええ?そら、大変だ!あだし、まだ処女だよ~?」

赤  「そうなんすか?」

半黒 「なんが文句あるが?見るが?」

赤  「い、い、い、いらね~べ~、んなもん!」

半黒 「あんだど~?」

黒  「こらこら、そんなごどどうでもいいべ!

    それより急いで逃げね~と大変でねだが。」

半黒 「んなこど言ったっで、こんなんなっててどうやって逃げんのよ、あだしだづ??」

黒  「揉み切れ!ふりほどけ!」

赤  「無理っす~(ToT)」

金  「海神さまが来っぞ~~~!」

黒  「長老!だめだ~~、もう、だめだ~~~!村はもう守れね~だ~~!」

半黒 「あんだも早く逃げる準備しな!」

黄  「いや、僕は残ります。ここを見届けるんだ!

    逃げられないなら、科学者の立場としてここからみんなの無事を見届けます!

    僕にはその義務がある!」

赤  「おい~~。いじましいごと言ってる場合がよ!」

金  「波が来っぞ~~~!海神様は目の前だべ~~~~!」

半黒 「うわああああああ~~~~!」

黒  「おわああああ~~~~~!」

俺  「おい。」


黒  「ひぇええええええ~~~。…え?」


俺  「おい。」


金  「海神さまがあああああ!」

半黒 「ぐやあああああああ。」

赤  「ぐおおおおお」

黄  「しくしくしく。」


俺  「おい!お前ら!」


金  「海神さまがあああああ!」

半黒 「ぐやあああああああ。」

赤  「ぐおおおおお」

黄  「しくしくしく。」

黒  「ひょ…え…。」


俺  「やめろ!」


黒  「…。」

赤  「ぐおおお…お…。…。」

金  「海神さまがあああああ!」

黒  「…お、おい、長老。」

金  「海神さまがあああああ!」

黒  「…やめるべ。長老。お客さん、おごってるべ。」

金  「海神…さま…が…。へ…?。」


黒、半黒、赤「…。」


俺  「お前らいっつもこんなことやってんの?」


黒  「あ…いや、まあ、大体…。だってなあ…。」

赤  「暇だものなあ…。」


俺  「ちゅか、さっきの唯物論だの、観念論だの、元素だの。

    なんだよあの適当な論説は。」


黄  「…すいません…。」

金  「海神さま…。」


俺  「もういいって。後でやり直してくれ。疲れるわ、お前ら。」


半黒 「あだしだづ、何かやりました?」


俺  「うるせえの。普通に。お前ら、海も知らないわけじゃん?

    どっから海神様とか来たんだよ。」


金  「そら、その…別のお客さん…。」


俺  「そか。毎日いろんな人乗ってくるもんな。

    劇団員とかいたんだ。ま、いいや。ちょっと今は静かに頼むわ。な。」


黒  「失敗だ…。今日は失敗したんだ…。」

赤  「先輩が盛り上げようって言うがらあ…。」

半黒 「わがるお客さんが乗って来るっつって、みんなして盛り上げねばなんねって頑張ったんですけども…。」

金  「脚本が悪いんでねが?そうですよね?脚本が悪りがったですよね、お客さん?」

黄  「僕ですか?僕?なんで?分かる人乗ってくるの珍しいから、急いで。でも、がんばったのに~・・・。」


俺  「こそこそしゃべんなよ。つか、脚本があるんだ、lこれ…。」


黒  「はあ、一応。ちゅか、難しい話すっからでねが?」

金  「んだよ、んだよ。難しすぎるんだよ。すいません~お客さん~~(泣)」

半黒 「んだ、んだ。んだよ、きっと~。」

赤  「やっぱ、そこだべ。こりゃ、失敗だ~!これは面白れえ、てみんなが言うがら~~~」

黄  「ええええ?本当に失敗だったのかああああ!ごめんなさいいいい~~~。」

金  「失敗だ、失敗だあ~~~~。」

黒、赤、半黒「失敗だあ、失敗だあああああ。」


俺   「うるさい!」


全員 「…。すいません。」


          *             *              *


運転手「この辺ですか?」

俺   「あ、はい。あの青の信号過ぎたあたりで右折してください。」

運転手「全く、この辺、夜は静かですよね。

     たまにお客さん乗せてきますけど、帰りは静かすぎてさびしくなるんですよね。

     ご自宅ですか?」

俺   「いや、友人の家があるんで。そうですか、静かですかあ…。」


全員「(*―_―*)。。。」


運転手「何か出るんじゃないかって思う時ありますよ。特に車ん中は静かですからねえ。

     よく聞くでしょ、タクシーの話。今は昼だからまあ、平気ですけどね。」

俺   「そうですね。まあ、平気じゃないですか?この車は。」

運転手「そうですか?お客さん、霊感とかあるですか?」

俺   「そうじゃないですけど、そんな気がするだけです。」

運転手「そうですかあ…。」

俺   「もうすでに5匹もいるし。」

運転手「え?」

俺   「いえいえ、友人がね、犬を5匹飼ってるんですよ。

     ああ、ここでいいです。いくら?」

運転手「ありがとうございました。お忘れ物ありませんように。」

俺   「大丈夫です。

     ああ、それとね。耳を澄ますとね、結構楽しいですよ。色んな音が。」

運転手「自然の音ですか?」

俺   「まあ、そんなとこですね。それじゃ。」

運転手「ありがとうございました~。」


黒   「あの、ありがとうございました。すんませんでした…。」

金   「次はもちっと面白くやりますんで、又乗ってください。」


俺   「…はいよ。」


全員  「おお、いがった~。今日はホントすいんませんでした~。」



           *           *            *


俺   「行ったか。

     誰が作ったんだろ。随分とまあ、生気を吹き込んもんだねえ…。

     しばらくはうるせ~な、あの車ん中。

     しっかし、笑える。面白かった。」


全員  「さいなら~。ま~た乗ってくださいいいぃぃぃぃ・・・。」


俺   「まあだ、やってるよ。うるせ~ぬいぐるみども(笑)。」



J's Coffee Break Station-5匹のぶら下がり

はい、どんとはれ。